古いミステリーだけを読んでいるわけではないのだが、創元推理文庫やハヤカワ・ポケットミステリで、読んでみようと思う新刊はたまにしかない。多分、好みが古いのだろう。
新刊ではないが、最近読んでわりと面白かったのは、「日曜の午後はミステリ作家とお茶を」。
「日曜の午後はミステリ作家とお茶を」 原題 SHANKS ON CRIME AND THE SHORT STORY SHAANKS GOES ROGUE 2003-2014 著者 ロバート・ロプレスティ 創元推理文庫 2018年
掲載誌・収録作など
五十代のミステリ作家、レオポルド・ロングシャンクス(通称シャンクス)を主人公とした短編集。多くは、ミステリ専門誌「アルフレッド・ヒッチコックス・ミステリ・マガジン(AHMM) に掲載された短編である。
本書とは話がずれるが、アルフレッド・ヒッチコックといえば、ロンドンに生まれ、アメリカで活躍した映画監督、プロデューサー。「レベッカ」、「サイコ」、「鳥」などのサスペンス系映画の監督として有名である。サスペンスはそれほど好きではない私も、「レベッカ」、「断崖」、「私は告白する」など、何作か見たことがある。テレビサスペンス「ヒッチコック劇場」も、再放送を見たときに面白かったので、録画しておいて結構たくさん見た。
本書は短編集なので、「あらすじ」の紹介はしないが、パターンとしては、ミステリ作家のロングシャンクスが、身近で起こった事件を解決していく筋立てである。冒頭の「シャンクス、昼食につきあう」では、ロングシャンクスは傍観者の立場であり、少しもどかしいような印象も受けたが、読み進んでいくと、結構、積極的に関わっていく話もある。
個人的には、地味ながら展開やオチが好みのタイプの短編集であった。雰囲気としては、「アイザック・アシモフ」の「黒後家蜘蛛の会」や「ユニオン・クラブ綺談」にほんの少し似ている。登場人物の個性や語られる蘊蓄やなぞときの面で華々しさはそれほどないが、主人公の「シャンクス」の人柄がよさそうで、妻や友人とのやりとりを読んでいると自分もその場にいるような感覚で読めるのが、楽しかった。
暴力や虐待や異常者が登場するミステリーも読むことはあるが、基本的には、あまりドロドロしておらず、後味がよい話が好みである。
「日曜の午後はミステリ作家とお茶を」は、それこそ、ゆったりした午後にお茶でも飲みながら楽しめる1冊だと思う。
収録作一覧
- シャンクス、昼食につきあう
- シャンクスはバーにいる
- シャンクス、ハリウッドに行く
- シャンクス、強盗にあう
- シャンクス、物色してまわる
- シャンクス、殺される
- シャンクスの手口
- シャンクスの階段
- シャンクスの牝馬
- シャンクスの記憶
- シャンクス、スピーチをする
- シャンクス、タクシーに乗る
- シャンクスは電話を切らない
- シャンクス、悪党になる