十一月五日 とびらをあけるメアリー・ポピンズ

佐久千曲川花火大会 2018
佐久千曲川花火大会 2018

11月5日は、ガイ・フォークス・デイだ。といっても、11月5日の夜にかがり火をたいたり花火をあげたりするのは、イギリスの風習であり、日本ではなじみがない。

ガイ・フォークスというのは、17世紀初頭のイングランドで国王ジェームズ1世と議事堂を爆破しようとした、1605年の火薬陰謀事件に関わって処刑された人物である。陰謀が発覚した11月5日になると、ガイ・フォークス人形を引き回しかがり火で焼く風習が生まれたが、その後人形を焼く風習はすたれ、かがり火をたいて子供たちが花火をあげる日となっている。

「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」の第1話、「十一月五日」を読んだときに初めてこの風習を知った。

MARY POPPINS OPENS THE DOOR  1943 P.L.トラヴァース

とびらをあけるメアリー・ポピンズ 岩波書店 林容吉訳 1964年

メアリー・ポピンズは、P.L.トラヴァースの一連の児童書に登場するナニーである。ナニーというのは、19世紀~20世紀初頭のイギリスにおいて中上流階級の家庭で子供たちの世話をしていた家事使用人であり、現在は職業の一つとして主に富裕層向けのサービスを提供しているようだ。

メアリー・ポピンズは、ロンドンの中流家庭バンクス家で子供たちの世話をしており、皮肉屋で厳しい有能な人物である。バンクス夫人はメアリー・ポピンズの前に出るとおどおどしてしまうが、頼りにしている。メアリーはたまにしか優しさや愛情を示さないが、バンクス家の子供たちはメアリーの愛情を十分に感じ取っており、メアリーに愛情と信頼を抱き、慕っている。また、メアリー・ポピンズがいると不思議な出来事がしょっちゅう起こるので、それも楽しみにしている。

十一月五日

ガイ・フォークス・デイの朝、バンクス氏は不機嫌に出勤し、バンクス夫人は頭を悩ませている。メアリー・ポピンズが2度目に去ってから、何もかもうまくいかなくなったのだ。そこへ、煙突掃除人が現れ、一人一人と握手をするとみな少し気分が治る。煙突掃除の後、バンクス家の子供たちと煙突掃除人は、公園へ花火に出かける。公園番とマッチ売りのバートも一緒に花火を楽しみ、仕上げの打ち上げ花火になると・・・。

あらすじはこんなところだが、煙突掃除人はヨーロッパなどでは幸運のシンボルとされており、この物語でも、幸運をもたらす役割を果たしている。実際には、18世紀後半から19世紀の間、煙突掃除の仕事では過酷な児童労働が問題となっていたようである。

この話に限らず、メアリー・ポピンズの態度は使用人としては偉そうなのだが、そこは、「有能な執事とご主人様」のバリエーションの一つで、やりとりも含めて楽しめる。子供たちとの信頼関係があるのと、メアリーが時折垣間見せるやさしさのせいもあるだろう。

子供の頃、メアリー・ポピンズの4冊が好きで、何度も読んでいたものだ。メアリー・シェパードの挿絵も物語の雰囲気にぴったりだと思う。

映画「メリー・ポピンズ」

1964年のディズニー映画「メリー・ポピンズ」については、個人的には原作とは別物だと思っている。作者のP.L.トラヴァースも、様々な条件をつけて映画化を承諾したものの、出来上がりには不満だったという話である。それでも、まったく別物だと割り切って見ればこれはこれで楽しい映画にはなっている。

最近、映画館で映画を見ていないので知らなかったのだが、なんと、その20年後の設定の「メリー・ポピンズ・リターンズ」というミュージカル・ファンタジー映画が製作されていた。日本公開は2019年2月1日である。原作からはさらに距離がありそうだが、ちょっと興味がある。

映画「メリー・ポピンズ・リターンズ」 ディズニー社のサイトはこちら

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とびらをあけるメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)

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