花を咲かせる みどりのゆび

バラの世話をするようになり、時折思い出すのが、子供の頃に読んだ童話「みどりのゆび」である。

みどりのゆび

作 モーリス・ドリュオン 絵 ジャクリーヌ・デュエーム 訳 安東次男 岩波書店

子供のころ読んだのは、1965年発行のハードカバー。最近再読したのは、2009年発行の愛蔵版。岩波少年文庫からも2002年に発行されている。

主人公のチトは、おやゆびを押しつけただけでいろいろな花を咲かせることができる、特別な素質を持っていました。チトと庭師のムスターシュおじさんはそのことを秘密にしていましたが、チトは密かに刑務所、貧民街、病院、動物園に花を咲かせます。さらに、戦争をやめさせようと、チトのお父さんの工場が製造して出荷した武器に花を咲かせます。そのために、チトのお父さんの工場は大打撃を受けますが、花を咲かせたのがチトだと知ったお父さんは、考えた末に、武器ではなく花をつくる工場に変えました・・・というのがおおまかなストーリー。

隠れた才能

作者は、第二次世界大戦中、ナチスドイツ占領下のフランスでレジスタンス活動をしていたこともあり、この本には反戦のメッセージが色濃く表れている。

しかし、私が子供の頃にこの本を読んで以来強く印象に残っていたのは、反戦のメッセージ自体よりも、チトの持つあっという間に花を咲かせる才能がうらやましいということだった。

チトほどは無理としても、自分も花をきれいに咲かせるのが上手だといいのになあという気持ちがあった。しかし、鉢植えの水やりのタイミングや加減さえよくわからかったので、自分にはその方面の才能はないという自覚もあった。

でも、この本を読んで以来、人には隠れた才能があるかもしれない、自分に少しでも得意なことがあったらそれを見つけて大事にしようという気持ちが強くなった。

また、チトは学校に行かなくても、庭師のムスターシュおじいさんという理解者を得て成長し、花を咲かせる能力を生かしていく。突出した能力があると集団になじめないこともありそうだけれど、チトのような生き方もいいなあと思ったりした。

花の持つパワー

また、詩的な挿絵も好きだった。こんな風に色とりどりの花をいつでも咲かせることができたら素敵だなあと思っていた。

子供の頃から、春に咲く花を見ると自分にも活力のようなものがわいてくる感じがしたものだったが、この本を読み、挿絵を見ても、同じような感覚があった。

最近、バラを育てるようになり、春から秋の時期は花を見るのが楽しみで、朝な夕な庭に出ている。バラを見ているときには無心になり、香りを感じ、疲れや心配事が薄れるような気がする。静かで満ち足りた気持ちになる。

バラの世話をする中では面倒な作業ももちろんあるが、バラの状態がよくなると、体は疲れてもうれしい気持ちになる。

バラではなくとも、春に桜の花見をしたり、水仙や菜の花やつつじなどの花の名所を訪れたりして花を楽しむこと。森林浴をすること。大木をご神木として奉ること。こういった行為も、花や木のパワーを感じることだと思う。森林浴の科学的な研究も進んでいるらしく、気のせいというだけではないようである。

「みどりのゆび」が長く読まれているのは、おそらく、この物語や挿絵の中の「花の持つパワー」に惹かれる人が多いからではないかという気がする。

この記事を書いているとき、何となく、宮崎駿監督の映画「風の谷のナウシカ」を連想したのだが、どうやら宮崎駿監督も「みどりのゆび」を読んでいるようだ。岩波少年文庫の中のおすすめの50冊として、下記の岩波新書の中で紹介されているらしい。あいにく未読であるが、読んだら紹介したい。

本へのとびら 岩波少年文庫を語る 著者 宮崎駿 2011年 岩波新書

「本へのとびら」の感想の記事はこちら

グリーンフィンガー グリーンサム

「みどりのゆび」の原作はフランス語であり、原題は TISTOU LES POUCES VERTS (チ(ス)トの緑の親指)であるが、英語でも、「green fingers(英)」「green thumbs(米)」 という表現があり、いずれも植物を育てるのが上手な人のことをいう。

上記の童話とはまったく関係がないが、グリーンフィンガーズ という題の映画もある。私は、たまたまテレビで放映していたときに見たが、なかなか面白かった。

英題 GREEN FINGERS 2000年 制作 イギリス アメリカ

重罪を犯し刑務所で無気力に過ごす主人公が、あるとき園芸に目覚め、他の受刑者たちとともに、権威あるガーデニングショーへの出展を目指していく、というのが、大まかなストーリー。

ストーリーとしてはありがちな更生ものになりかねないのだが、イギリスで撮影したということもあってか、「ガーデニング」がリアルに感じられたのが、映画の魅力を増していると思う。また、「花の持つパワー」が感じ取れることが、何となく記憶に残る映画にしているのではなかろうか。

自分でもガーデニングにいそしむようになり、もう一度見たい映画である。

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グリーンフィンガーズ [DVD]


みどりのゆび (岩波少年文庫)

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