あらいぐまラスカル 原作を読んで ラスカルの故郷

ラスカルのぬいぐるみ
ラスカルのぬいぐるみ

息子がもう少し幼い頃、アニメ「あらいぐまラスカル」が大好きで、繰り返し見ていた。かくいう私も、子供の頃好きで見ていた。息子が見ていたのも、再放送されたときに、なつかしさから全話録画しておいたものである。

外来生物としてのアライグマ

アライグマはもともと北米原産だが、日本でも外来種として増え続け、農作物や住宅の被害や生態系への影響などが問題となっている。2005年に特定外来生物として指定され、輸入や飼育等は規制され、必要に応じて防除される対象となった。

アライグマの問題に関する記事は時々見る。最近も、2018年10月17日に東京の赤坂にアライグマが現れ、捕獲されたというニュースを見た。また11月5日には「アライグマ、安易に飼い『流血の日々』 次第に見せた『野生の顔』 それでも手放さなかった8年10ヶ月」というインターネットニュースの記事を読んだ。

日本では、野生化したアライグマは1960年代からいたようだが、増えたのはアニメ「あらいぐまラスカル」の影響でペットとして人気が出てからだろう。アライグマは、手先が器用なので檻から逃げ出したり、成長すると気性も荒くなるので飼いきれずに捨てられたり、ということがあったようだ。11月5日の記事は、ペットショップで買ったアライグマを死ぬまで飼い続けたさとうまきこさんという人の話だが、本当に大変で後悔したらしい。

私自身は、アライグマを飼ったことも飼おうと思ったこともない。子供の頃、家には金魚やインコ、クサガメやイシガメ(庭に住みついていた)がいたし、その後、猫(近所に捨てられていたのを拾った)も何匹も飼っていた。カメは勝手に庭にいて、時々食べ物をやることがある程度だったので気楽だったが、他の生き物の世話はそれなりに大変だと思っていたので、「アライグマを飼いたい」という発想は全然なかった。息子も、昆虫採集でクワガタムシなどを捕ってきて飼っている程度で、あまり動物を飼いたがらないので助かる。

アライグマ ぬいぐるみ

アライグマ ぬいぐるみ

原作は ラスカルを森へ返すのはアニメと同じ

「あらいぐまラスカル」の原作は、「はるかなるわがラスカル」。作者のスターリング・ノース(1906年11月4日~1974年12月22日)が、少年の頃に1年間飼っていたアライグマの思い出を綴った物語だ。

Rascal: A memoir of a Better Era 1963 Thomas  Sterling North

※ 邦題 はるかなるわがラスカル 1994 小学館ライブラリーなど。2018年現在は、オンデマンド出版で購入可能

私は大人になってから原作を読んだのだが、原作の雰囲気はアニメに十分反映されていると思う。しかし、アニメのエピソードの多くは原作にはなく、他方、アニメには登場しない兄(第一次世界大戦に出征中)への思いや、父への批判的な思いなども書かれている。

また、ラスカルとの出会いもアニメとは異なる。スターリングが親友のオスカーと一緒にいるときに、森で飼い犬のハウザーが偶然アライグマ母子を見つけたところは同じだが、母子全部を捕まえようというつもりが、母アライグマに逃げられ、3匹の子アライグマも後をついて逃げて行き、1匹だけ残ったのだ。少年の衝動的な行動の結果である。

残った子アライグマをラスカルと名付けて育てることにしたものの、当初は育てられるかどうか自体があやふやで、無事に育ってからも、成獣になったら森に返すことはある程度念頭にあったようだ。そして約1年後に、カヌーでコシュコノング湖の向こう側へ連れて行きラスカルと別れるのは、アニメも原作も同じである。犬や猫だけでなく、スカンクやウッドチャックも飼っていたスターリングは、野生動物の成獣を飼うことの難しさも感じていたのだろう。日本でいうと、タヌキの子を捕まえてきて飼うようなものだろうか。

野生動物を安易に飼い慣らすことへの批判は当時からあったと思うし、スターリング自身にもその葛藤はあったようだ。しかし、ラスカルがかわいいからといって、当時のアメリカでアライグマをペットショップで買えるわけでもなく、スターリングの回りで真似をしてアライグマを飼う人が増えたわけではない。

森に返すといっても、100年ほど前の今よりもずっと自然が豊かであったアメリカでのことで、もともとの生息地でもあり、日本におけるような問題は生じなかったはずである。

母を亡くし兄姉も家を離れ、父は仕事で不在がちという家庭環境で、一人でいる寂しさを埋め合わせるため、捕まえたアライグマが成獣になるまでは育てたい、というスターリングを責めるのは酷な気がする。

アライグマ ぬいぐるみ

アライグマ ぬいぐるみ

アニメでも

アニメでも、制作陣は、野生動物を飼うことから生じる問題を原作から読み取り、十分認識していた。そのため、スターリングが周囲の農家の人から責められるシーンも、檻で飼うことの辛さや逃げ出さないようにする難しさ、別れの辛さなどもきちんと描くようにしたらしい。

制作過程については、「ラスカルにあいたい」(ちばかおり著 株式会社求龍堂 2007年)に詳しく書かれている。その中で、脚本の宮崎晃氏の言葉として、次のように述べられている。

(前略)・・・飼おうとする人が出てきて、しかも飼いきれずに放してしまう。それが今、日本の生態系を壊しているでしょう?あの『ラスカル』の人気が出たばかりにと思うと本当に胸が痛みますね。作品をちゃんと見れば、アライグマを飼うこととはまったく逆のメッセージになっているんです。    (ラスカルにあいたい ちばかおり著 から引用)

そこに述べられているように、ラスカルの人気から世間でアライグマがブームになり、ペットとして売られるようになったこと、野生化して問題が生じたことは、「あらいぐまラスカル」の制作陣にとっても不本意であったようだ。

息子が見るので私も4回くらいは通して全話を見たが、たしかに、アライグマを飼う大変さや周囲との軋轢も描かれているし、スターリングは、原作以上に、ラスカルを森へ返すことを早くから意識している。アリス(原作には登場しない)が、けがをした白鳥のヒナを育てて放してやるエピソード(原作にはない)でも、アリスは、学校の先生やスターリングから、野生動物は自然の中で生きるのが一番いいと言われている。

スターリング・ノースの家

あらいぐまラスカルの原作の作者、スターリング・ノースが少年の頃住んでいた家は、シカゴ近郊のエジャートン(Edgerton)(ウィスコンシン州)という町に今もあり、公開されている。ラスカルを飼っていたときの庭の樫の木は数年前の嵐で倒れてしまい、今はないが、家も周囲も当時の様子をよく残している。

スターリング・ノースの少年時代の家

スターリング・ノースの少年時代の家

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アニメ「あらいぐまラスカル」の原作「はるかなるわがラスカル」

はるかなるわがラスカル


はるかなるわがラスカル (1976年) (角川文庫)

アニメ「あらいぐまラスカル」のあらすじ、名場面、制作秘話、主題歌、ふるさとの情報など。


ラスカルにあいたい

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