2年ほど前に夫が栃木に行った際、お土産に、Nelloという店のチョコレートを買ってきたことがある。お店の紙袋の絵に目がとまった。犬と少年?ということは、Nelloはフランダースの犬のネロ?
ベルギーチョコレート専門店 Nello
ベルギーチョコレートを空輸して販売しているお店。実店舗は栃木県宇都宮市内。インターネット通販でも購入可能。
お土産の商品はトリュフとプラリネの詰め合わせ、おまかせセットだったと思うが、写真は撮っていない(当時は何でも写真に残す習慣がなかった)。カカオとナッツやフルーツの味がバランスよく、おいしく食した。が、チョコレートには特にこだわりがない私には、猫に小判だったかもしれない。
ゴディバなどの高級チョコレートはどれもおいしいとは思うが、贈答用のイメージが強い。こういったブランドのチョコレートは、外観と味のよさプラス高級感も求められている。あとは、個人の好みである。
Nelloのチョコレートも、価格からいうと贈答用の高級チョコレートの範疇だと思うが、贈り物に、百貨店などで買える定番のブランドとはちょっと目先を変えたいという人にはおすすめだろう。
ベルギーチョコレートあれこれ
普段は、日本製の板チョコやコンビニエンスストアのチョコ菓子などで満足しているが、Nelloのチョコレートを食べて以来、少しチョコレートへの関心が出てきた。
ちなみに、定番の、ガーナ、森永、明治の板チョコレートの中では何となく明治のミルクチョコレートが一番好みである。また、これまでに素直においしいと思ったチョコレートの一つは、リンツのリンドールである。
ゴディバはベルギー、リンツはスイスだが、ちょっと検索して調べてみると、EUの基準では、チョコレートにココアバター以外の植物油脂を総重量の5%未満であれば混ぜることが認められているらしい(EU法原文までは確認していないが)。しかし、EUの中でも、従来から厳格な基準を採用していたベルギーなど、依然として他の植物油脂を混ぜることを認めていない国もあるようだ。これに対して、日本では基準の決め方が異なり、チョコレート中のココアバター以外の植物油脂の割合についての定めはない。
ちなみに、明治のミルクチョコレートの成分を見てみると(じっくり見たのは初めてだ)、ココアバター以外の植物油脂は使用されていない。私も意外と味が分かっていた?(自画自賛) なお、リンドールには植物油脂が使用されている。
とりあえずベルギーチョコレートの味を確認してみたくなり、あまり高すぎないものをいくつか買ってみた。ビター系よりもミルク系が好きなので、ミルクチョコレート。金に糸目をつけないというほどのチョコレート好きではないので、価格的には500円前後が限度である。
コートドール タブレット ミルク
150g 600円(税抜)
口に入れると、まずカカオの香りがし、甘みは後からくる感じ。甘みもしっかりしているが、カカオの風味が強いせいか、甘すぎるとは思わなかった。口溶けはよいが、少しざらっとしている。
レオニダス ミルク
50g 400円(税抜)
口に入れたときの、カカオの香りは少しマイルドで、クリーミーに感じる。コートドールよりも、カカオ風味と甘みとミルク風味が溶け合っていて、個人的にはこちらの方がコートドールより好みだ。
が、しかし。価格が明治のミルクチョコレートの約4倍というと、ちょっと高く感じる。
昨年2017年に話題になった明治のザ・チョコレートは、コートドールのタブレットと同程度の価格帯である。まだ食べていないのだが、こうなったら、比較のために食べてみようと思う。
フランダースの犬
作者 ウィーダ 1872年発表 岩波少年文庫 1957年
ところで、Nello というお店の名前には最初少し引っかかったのだった。というのも、アニメ「フランダースの犬」では、村に風車があったりアロアの服がオランダの民族衣装風だったりと、ベルギーのイメージがあまりなかったからだ。でも、ネロがアントワープの大聖堂にルーベンスの絵を見に行く場面もあったことを思うと、舞台はベルギーだったのか。
家に岩波少年文庫の「フランダースの犬」があったことを思いだし、再読。
「フランダースの犬」は、画家を志す少年ネロと犬のパトラッシュが主人公。両親のないネロは気立てもよく勤勉な少年で、村の有力者の娘アロアと仲良しだったが、アロアの父親のコゼツ旦那はネロが貧しく家柄もよくないことから、アロアが年頃になったときのことを心配して遠ざけようとする。益々困窮していく中で、ネロは、絵のコンクールに出品しその賞金を得ることを支えにして耐えていた。しかし、コンクールに落選して絶望し、大聖堂のルーベンスの絵を一目見て死のうとアントワープへ向かう。その道筋、落ちていた財布をパトラッシュが発見し、アロアの家に届ける。アロアとその母に引き留められるがネロはそのままアントワープに向かい、たまたま開いていた扉から大聖堂に入ることができ、差し込む月の光でルーベンスの絵を見て感激し、追ってきたパトラッシュとともに息果てる。コゼツ旦那は自分がネロに冷たくしてきたことを後悔し、ネロの絵を評価し後ろ盾になろうという画家も現れたが、時既に遅し、というお話。
1975年にテレビアニメーションが放映されたことで、有名になった。
こういう理解されずに死んでいった純真な少年と忠実な犬という組み合わせは、日本では受けそうな話である。しかし、原作の設定では15歳のネロが村の半端仕事しかせず画家を志しているのはアロアの父から「甘い」と思われても仕方がない面がある。それに一度の落選で絶望するのも、あきらめが早いのでは。かといってコゼツ旦那も意固地で必要以上に冷たいし、コゼツ旦那にただ同調してネロに冷たくあたる村の人たちもどうかと思うので、個人的には、どの登場人物にも感情移入しづらい。
理解されずに死んでいった純真な少年という設定では、子供の頃に読んだ「幼い天使」(作 フローレンス・モンゴメリ 小学館1977年)という物語の方が心に残っているが、それはさておき。
岩波少年文庫の「フランダースの犬」に収録されているもう一つの物語「ニュルンベルグのストーブ」の方は、ハッピーエンドで読みやすい。また、作中で描写されている陶器のストーブというのが興味深い。日本ではなじみがないが、ドイツやイタリア北部ではよく造られていたようだ。インターネットで検索して画像を見ると、こんな素敵なストーブがあったら貧しくても特別な気分になれそうだと思うようなものだった。
「ニュルンベルグのストーブ」の中では、ストーブが、こどもの多い貧しい家庭で大切にされる幸福を語りだす場面(主人公の夢?)がある。「フランダースの犬」の中でも、ルーベンスの祭壇画が布で覆われていて、お金を払わないと見られないなんて作者の本意ではないはずだといったことをパトラッシュに対してネロが語る場面がある。作者は、これらの子供向けの物語を通じて、芸術作品は富裕層だけのものではなく、すべての人に開かれているべきだという理念を語っているのだろう。
なお、2018年6月現在、アントワープのノートルダム大聖堂は入館料が必要。信者が礼拝のために出入りするだけでなく、世界中から訪れた観光客が観覧するのだから、維持管理費が必要なのは理解できる。
「フランダースの犬」は、英語で発表され、作者のウィーダは英国出身、ストーリーも現地の人には受け入れ難い面があるといったことなどから、物語の舞台となったベルギーでの知名度は低かったようだ。しかし、アントワープを訪れる日本人観光客が「フランダースの犬」について質問するため、ベルギーでも観光資源の一つとして活用するようになったらしい。
アントワープに行くことがあったら、ノートルダム大聖堂のルーベンスの絵と、「フランダースの犬」のモニュメントを見て、おいしいベルギーチョコレートを買ってきたい。