「みどりのゆび」の記事を書いたときに、この本の存在を知ったので読んでみた。
本へのとびらー岩波少年文庫を語る
著者 宮崎駿 2011年 岩波新書
岩波少年文庫は、岩波書店が出版している一連の児童文学書である。1950年創刊。岩波書店のホームページでは、全巻リストは掲載されていない。過去に発行されたものでは絶版になったものもあり、翻訳を変えて再発行されたものもある。
岩波少年文庫別冊「なつかしい本の記憶ー岩波少年文庫の50年」2000年 岩波書店編集部 の巻末に書目一覧が載っているらしい。
「本へのとびら」では宮崎駿監督が、読むに値すると思った50冊が挙げられている。もっとも、同じ作者の作品は1冊に絞られているので、ドリトル先生などシリーズものもあることを考えると、紹介されている本は、実質的には50冊以上といえる。
宮崎アニメが好きな人には、興味深い一冊だろう。
岩波少年文庫の本を読んだことがある人は、懐かしい気分になるだろう。
本に対する思い
思い入れという点では子供の頃読んだ本の方が強いと思うが、50冊の中には宮崎監督が大人になってから読んだものもあるようである。周囲の人がいいという本で、宮崎監督ご自身は最後まで読んでいない本も含まれている。
また、宮崎監督は若い頃から漫画家になりたいという思いが強かったようで、早いうちから漫画やアニメの素材として取り入れるという読み方をしていたようにみえる。「風の王子たち」や「フランバーズ屋敷の人々1 愛の旅だち」のコメントをみると、やはり飛行機がお好きなのだなと思う。
ご自身が子供のころに読んで好きだった本の方が、紹介コメントに熱意があるような印象を受けた。
もっとも、「置いてあっても子供は読まない」という記載には、あまり共感できなかった。たしかに、うちの息子の好きな本も、私の本の好みとは重なる部分もあれば異なる部分もあるので、親が薦めても読まない本もあるだろう。しかし、私自身が子供の頃は、とにかく家にあった本は片端から読んだ。置いてある本を読むか読まないかは、人によると思う。
挿絵の力
宮崎監督は漫画家でありアニメーターであるので、この本の中でも、好きな挿絵や挿絵画家についてとりあげられている。中でも、「くまのプーさん」や「たのしい川べ」の、E・H・シェパードや、「床下の小人たち」のディアナ・スタンレイなどについては、熱く語られている。
私も、E・H・シェパードの絵は子供の頃から好きで、初めて読む本でもE・H・シェパードの挿絵だと嬉しくなったものである。ちなみに、この本の50冊の中には含まれていないが、「風に乗ってきたメアリー・ポピンズ」などの「メアリー・ポピンズ」シリーズの挿絵を描いたメアリー・シェパードは、E・H・シェパードの娘である。
岩波少年文庫 再読中
息子と図書館に行き、こどもの本のコーナーに行くと、書架に並ぶ岩波少年文庫が目に入る。息子は昆虫や乗り物の本を借り、私は子供のころ読んだ岩波少年文庫を何冊か借りて再読したりしている。未読のものもあるので、全部読んでみたい気もしているところである。
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本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)