子供にヴァイオリンを習わせるにあたって、1/4サイズの分数ヴァイオリン ステンター SV-180 を購入した。その感想など。
STENTOR SV-180 楽器 弓 松ヤニ ケース のセット
表示価格は21,000円。今見ると(2019年7月)、実売価格はもう少し安いようだ。
選んだ経緯
入門用の楽器としては、ヤマハやスズキのヴァイオリンのセット(5~6万円くらい)が一般的だろう。ヴァイオリンの日本のメーカーとしてはよく知られている。
分数楽器は成長に伴い1年~1年半くらいで大きなサイズに何度か買い替えることになるので、できればなるべく出費を抑えたいと思った。
検索してみると、インターネット販売サイトでは、セットで1万円程度からある。その中で、セットで2万円程度の STENTOR(ステンター)というメーカーのものが気になった。ステンターは、1895年創業のイギリスのメーカーで低価格帯のヴァイオリンに力を入れているようだ。
しかし、実際、2万円台くらいのヴァイオリンでもよいものかどうか。
買う前に、習う予定の先生にも楽器について聞いてみたところ、高価な楽器を勧められるなどということもなく、
- 分数楽器の使用期間は短いので、高い楽器はもったいない。
- サイズ替えをする生徒がいたら前の楽器を譲ってもらうか借りるかできるのだが、今、1/4のサイズからサイズ替えをする生徒がいない。
- 以前1万円くらいの楽器を用意した生徒がいて、それはちょっと練習にならない楽器だったが、そこまででなければ、かなり安いものでよい。
- よく分からないようなら店に同行して選んでもよいし、保護者の判断で買っても構わない。
ということだった。
知り合いの他のヴァイオリンの先生にも聞いてみたら、「分数楽器の最近の状況を知らないが、中古やレンタルでもそれほど安くはないので新しい楽器で安いのを買うとよいと思う。分数楽器でも何十万というものもあるけど・・・。まあ、しばらくしか使わないものだから、一般的な入門用の楽器でよいのでは。」ということだった。
一般的な入門用の楽器というとヤマハやスズキなどのことだろうが、まあ、総合すると分数ヴァイオリンにそれほど費用をかける必要はなさそうである。
試奏できないのが少し不安ではあったが、ステンターのセットを買うことにした。
同程度の価格帯のカルロ・ジョルダーノ(マックコーポレーション株式会社)にしなかったのは、少しそちらの方が高かったのと、評判はどちらも似たような感じだったが、低い評価のコメントがステンターの方が若干少なかったためである。弾き比べたわけではないので、実際の違いはわからない。
ステンター SV-180(1/4) 使用感など
届いたヴァイオリン(1/4)は、ケースもきれいで、楽器も弓も外観は特に問題なさそうだった。
セットの弓にセットの松ヤニをつけて、とりあえず音を鳴らしてみると予想より大きな音が出た。松ヤニをつけていない新しい弓は本当に音が出ず、最初のうちは松ヤニが落ちやすいので、弾く度に松ヤニをつける感じである。
チューニングしてみると、ペグは問題なく回したり止めたりできる。改めて弾いてみると、音色は平板な感じだが、気になるような雑音はなく、音階の音の高さが合うところでよく鳴るのが判別できる。G線の音が少しぼやっとしており、駒の形のせいかD線やA線を弾くときに隣の弦にも弓が触れやすいが、値段を考えるとこんなものだろう。
個体差もあるかもしれないが、入門者の練習用として一応使える楽器だと思った。
分数楽器にはスチール弦が張られていることが多く、この楽器もそうだったが、少し金属的な音がするのと、倍音に乱れが出るなどと言われることもあるので、ナイロン弦に張り替えてみた。鳴りにくい楽器はスチール弦の方がよいこともあるらしいので、スチール弦のまま使うか、ナイロン弦に替えてみるかは好みだろう。
ナイロン弦ではとりあえずドミナント(DOMINANT)を考えていたところ、1/4用は同じメーカーのヴィジョン(VISION)の4本セットが少し安く、4,000円弱だったのでそれにした。フルサイズ(4/4)だと、E線だけ Lenzner 社の Goldbrokat を使ったりするが、これはもう細かいことは気にしないことにした。
THOMASTIK INFELD 社 ヴァイオリン用の弦 VISION 1/4用
パッケージの絵は、エッシャーの、鳥と魚のだまし絵と似ている。
ナイロン弦に替えた後は、音の金属的な感じが減り、少し響きが聴きやすくなった気がした。ナイロン弦に替えてよかったようだ。
楽器が新しく、弦を張り替えたばかりのときは、チューニングも安定せず、音量も出にくい気がするが、しばらくすると落ち着いてくるはずだ。練習量と使用期間を考えると、楽器のサイズ替えのときまでこのままのつもりである。
子供は、フルサイズのような音が出ないこと自体に不満そうだったが、そこはもう仕方がない。D線とA線は最初は少し弾きにくそうだったが、そのうち隣の弦に触れずに弾けるようになった。子供というのは慣れるのが早いものだ。弾くのに慣れてくると響きの違いで修正もできるようになって、楽器もよく鳴るようになってくる。鳴るようになってくると自分の楽器という感じがするようで、不満を言わなくなった。
レッスンのときに先生に見せると、初めて見るメーカーの楽器ということで、よいとも悪いとも言われなかったが、その後、新しく始める人に、「こういうのを使っている人もいる」と教えたらしいので、一応使えるということなのだろう。
先生が弾いてみせてくれると、かなり大きな音も出せるのが分かる。発表会でも、同じくらいのサイズの楽器の他の生徒さんと比べて、楽器の音が小さいとか音色が悪いということもなかった。他の生徒さんがどういう楽器を使っているのか分からないが、おそらくこれより安いということもないだろう。
子供の習い事は続くか分からないし、不注意な扱いをすることもあるので、これくらいの値段ならまあ気楽である。個人的には、少なくとも1/4以下のサイズではたいした音は出ないと思うので、STENTOR SV-180 で十分かなと思った。
子供にヴァイオリンをやらせてみたいが初期費用は抑えたいという場合は、十分選択肢の一つになるだろう。お金が余っているというのでなければ、分数楽器で数万円上乗せするよりは、その分をフルサイズを買うときに回した方がよいような気がする。
初心者用ヴァイオリン どこで買うか?
STENTOR AV-180 は、インターネット販売サイトで購入した。実店舗で取り扱いがあるのかは調べたわけではないのでよく分からないが、これまで行ったことのある店で置いてあったヴァイオリンは、ぱっと見た感じでは5~6万円くらいからだったと思う。
インターネット販売サイトで買う場合、どんなものが届くか分からない。そこが、2万円~3万円の価格帯のヴァイオリンの一番のリスクではなかろうか。
そこで、気をつけたのは以下の点である。
- 販売サイトが一応楽器関係の店であること
- 「調整済み」であること
- 販売サイトの相談窓口で質問などに対してある程度の回答をしてくれたり、返品やアフターケアなどの対応をしてくれること
インターネット通販では、店舗や在庫を持たずに工場出荷や運営会社の倉庫から商品直送のこともある。弦楽器の場合、工場検品が甘かったり輸入中の事故等により不良な状態の物が届くと困る。そういう点では、実店舗のある楽器店や音楽用品の販売サイト、音楽教室関係の販売サイトなどで、その楽器が弾ける状態かどうか、最低限のチェックや調整がされている方が安心だと思う。そういう販売サイトは「ネット最安価格」ではないことが多いが、自分としては少しでも安心な方にした。
「調整」というのは、ヴァイオリンなどの弦楽器で、ペグ(糸巻き)、魂柱(内部に立ててある棒)、駒(弦を張るために表面に立ててある薄い板)、アゴ当て(アゴを置く黒い部分)など各パーツの細かな位置関係などを適切な状態にすることである。最低限の調整もされていないと、楽器に不具合が出たり、音色が悪かったりする。どの程度きちんと調整されているかは購入者には判断しづらいものだが、ペグが回らない、止まらない、アゴ当ての位置がおかしい、雑音が多いといった場合は、初期不良、調整不良だろう。
どういう調整をしているのか、どういう場合に返品や無料での修理の対応をするのかについて、サイト内に説明があったり、届いた商品に疑問がある場合に問い合わせに応じてくれたりする店の方がよいように思う。
買った後で、料金を払って楽器店で調整してもらってもよいのだが、2万円程度の楽器の調整にどこまで費用をかけるかというところだろう。
肩当て
楽器を構えるときにあった方がよい「肩当て」は、1/16~1/4用の1,000円ほどの物を購入。肩当ても、楽器のサイズ替えのときに何度か買い替えることになるので、なるべく安いものにしたが、特に問題なく使えている。
反対側。
弦を替えて肩当ても買っても、3万円もかからず、初期費用を抑えることができた。