ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」 カレル・アンチェル 感想

グレン・グールドが、カレル・アンチェル/トロント交響楽団と共演した、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を聴いてから、カレル・アンチェル指揮の演奏をもっと聴きたくなり、CDを探して買ってみた。最近はCDを買う人も減っているのかもしれないが、クラシックを聴くときは、何となくCDかDVDを買うことが多い。

今回感想を書いたCDはこちら。

ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」「自然の王国で」「謝肉祭」 カレル・アンチェル指揮 チェコフィルハーモニー管弦楽団 1961年録音 (日本コロムビア国内盤)

「皇帝」が収録されている「ザ・グレン・グールド・コレクション Vol.11&12」の感想はこちら

新世界より

ドヴォルザークの「新世界より」も、ベートーヴェンの「皇帝」と同様有名な曲なので聴く機会は結構あったが、特別に好きな曲というわけでもなかったので、「新世界より」のCDを買うのは今回が初めてだった。ここ20年くらいは、室内楽やヴァイオリン、チェロ、ピアノなどの曲を聴くことが多く、交響曲やピアノ協奏曲などの編成の大きい曲はたまに聴くくらいであった。

で、聴いてみた感想はというと。

引き込まれるように聴き入ってしまった。

この曲は、ティンパニーや管楽器がやかましく感じたり、旋律がしつこく感じたり、まとまりがないように感じたりしていたのだが、アンチェル/チェコ・フィルのこの演奏は、そういうところが全くない。しかし、全体に精密で端正な演奏であるが、単調ということはなく、淡々としているようでいて、ティンパニーの緊張感のある音、管楽器の澄んだ音色、弦楽器の精妙な音色のバランスは絶妙で、抑えた情感が醸し出される。民族音楽的なところは強調されていないのだが、曲自体から自然に浮かび上がってくるようだ。

カレル・アンチェルの指揮は、奇をてらったところも派手なところもないが、曲がよく分かるというか、よく知っている曲でも、初めて聴くような、それまで知らなかったその曲のよさを感じるような気がする。名工の技とでもいおうか。

このCDに収録されている他の曲、ドヴォルザークの「自然の王国で」、「謝肉祭」はこれまで聴いたことがなかったのだが、どの曲も、よかった。

オーディオ環境や音質にはそれほどこだわりがないが、同じ音源のCDの中から比較的評判がよく値段も手頃なCDを選んだ。音質は特に問題なかったと思う。

カレル・アンチェル

カレル・アンチェルは、その悲運な生涯でも知られる。カラヤンと同年の1908年に、ボヘミア南部のトゥカピで生まれ、1933年にはプラハ放送交響楽団の指揮者を務めたが、ナチスドイツにより強制収容所に送られ、家族をなくし、一人生還。1950年にチェコ・フィルハーモニーの首席指揮者に就任し輝かしい実績を築くが、1968年にチェコ事件(ソ連軍を中心としたワルシャワ条約機構軍がチェコに軍事介入した事件)が起こり、演奏旅行中のカナダに亡命。オファーを受けていたトロント交響楽団の音楽監督に1969年シーズンから就任したが、強制収容所で健康を害していたのがもとで、1973年に65歳で死去。

カレル・アンチェル/チェコフィルハーモニー管弦楽団は、スメタナの「わが祖国」やショスタコーヴィチの交響曲のCDなども評判がよいようだ。スメタナやショスタコーヴィチの曲もどちらかというとこれまで敬遠してきたのだが、聴いてみるつもりである。

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コメント

  1. 斎藤 卓 より:

    こちらの記事を参考に、カレル・アンチェルの新世界を聴いてみました。もともと東欧の演奏家のドヴォルザークが比較的好きでしたが、なかでもこの演奏は個人的には理想型で、おかげさまで今では愛聴盤となっています。ありがとうございました。

    • 常盤あさ より:

      斎藤様
      はじめまして。
      同じように感じられる方がいらっしゃって嬉しいです。
      コメントをいただきありがとうございました。