2019年4月16日朝、パリのノートルダム大聖堂の火災のニュースを見て、石造りでもあんなに燃える部分があるのかと意外だった。石材を支える骨組みの部分や屋根の部分などに、木材が使われていたようだ。
さて、火災のニュースの際、たまたまビクトル・ユゴーの「ノートル=ダム・ド・パリ」を読んでいるところだったので、その感想。
ノートル=ダム・ド・パリ Notre-Dame de Paris 1831 ビクトル・ユゴー
読んだのは2016年版の岩波文庫(辻昶(つじとおる)、松下和則訳)。
あらすじ(結末まであり)
あらすじを何となく知っていたため、あまり読む気にならず、ずっと読まずにいた。
ノートル=ダム・ド・パリを基にした作品は、映画、ディズニーのアニメーション映画、オペラ、ミュージカル、バレエなど数多いが、原作のある映像化作品などは、原作を読む前には見ないようにしているので、どれも見たことがない。結末がハッピーエンドのように改変されているものもあるようだ。
最近、なぜか思い立って読んでみたのだが、作品の雰囲気はあらすじから予想していたのとは違っていた。パリ裁判所で聖史劇が上演される場面が延々と語られる導入部には少しめんくらったが、そこを読み進んでも、詩人のグランゴワールが泥棒や物乞いの巣窟に連れていかれる場面、ノートルダム大聖堂やパリについて述べた章など物語の筋とは離れた記述も多い。
ノートルダム大聖堂と「宿命」
序文によると、作者は、大聖堂の塔の壁にギリシア文字で書かれていた「宿命」という言葉にインスピレーションを受けたようなので、個々の登場人物の生き方や内面というよりは、中世のノートルダム大聖堂を舞台に周辺の人々の宿命が描かれた物語なのだろう。
そうとわかると、神話やギリシア悲劇を読むときのように読んでいくのがしっくりくるように感じた。エスメラルダも、カジモドもフロロも、宿命からは逃れられないのだ。
もっとも、登場人物の中でも、司教補佐のフロロが嫉妬に苦しむ描写に力が入っているように見えるのは、作者が執筆時に妻の不倫に苦しんでいたからかもしれない。個人的には、詩人で哲学者のピエール・グランゴワールの飄々とした態度が面白かった。
ところで、物語の舞台となったノートルダム大聖堂は、フランス革命以降、略奪や破壊活動にあい、ビクトル・ユーゴーがノートル=ダム・ド・パリを執筆した当時は荒廃していたらしい。ノートル=ダム・ド・パリが出版されたことにより、再建の機運が高まったのだという。
この度の火災で大きなダメージを被ったノートル=ダム・大聖堂。南側のバラ窓のステンドグラスも損壊したらしい。塩野七生さんのどの著作だったかで読んだ記憶だが、ステンドガラスの色の復元は、費用や技術や使う薬品の関係で難しいものもあるようだ。どのように復元するのかという、関係者の間でのイメージや方向性の統一が大変そうである。
再建の費用や様式については早速論争されているようで、再建の期間や再建後の姿が気になるところである。
バラ エスメラルダ ヴィクトル・ユゴー
さて、バラ好きとしては、多分、エスメラルダというバラもあるだろうと気になって調べてみると、やはりあった。ローズピンク色の美しいバラである。ドイツのコルデス作出であるのは、少々意外だったが。
エスメラルダ Esmeralda HT 1981年 ドイツ Kordes
作者の名のバラもある。こちらは、フランス、メイアン作出の紅いバラ。
ヴィクトル・ユーゴー Victor Hugo HT 1985年 フランス Meilland