夜間飛行 サン=テグジュペリ 感想

志賀高原
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星の王子さまのバラについて考えていたときに、「夜間飛行」が未読であることが気になってきた。サン=テグジュペリの妻コンスエロの視点で書かれた「バラの回想」も読み、「飛行機乗り」であることがサン=テグジュペリの大きな部分を占めていることが感じられて、その部分について書かれているはずの「夜間飛行」を読まない限り、何かが足りないという気がしたのである。

夜間飛行 原題 VOL DE NUIT 1931 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

読んだのは、光文社古典新訳文庫 2010年 二木麻里訳。他に、堀口大学訳の新潮文庫など。

読んでみて

読んでよかったと思う。しかし、あらすじや感想が書きにくい。

自身で読んでみるのが一番よいという本があるが、「夜間飛行」もそうだと思う。短くて、完成度が高いので、あらすじや感想として何を書いても余分なことのような気がしてしまう。

そういってしまうと身もふたもないので、概要だけは書いておくと、南米の郵便を運ぶ航空会社の、ある悪天候の日の夕方から未明にかけてのパイロットや社長、その他の関係者の行動や心情を描いた小説である。

今でこそ夜間のフライトも当たり前だが、1920年代にはまだまだ危険な行為だった。「夜間飛行」を読む際には、そのことを頭においておくべきだろう。

ライト兄弟が有人動力飛行に成功したのが1903年。その後各国で飛行機の開発が進み、第一次世界大戦(1914~1918)を機に一気に性能が向上し、実用化される。戦後は民間での利用も進んでいくのだが、1920年代には依然としてレーダーや管制の態勢などは不十分であり有視界飛行が基本だった。そんな時代に、郵便機の夜間運航を進めたのが、ディディエ・ドーラ。「夜間飛行」の主要な登場人物、リヴィエールのモデルと言われている。

ディディエ・ドーラは、第一次世界大戦のフランス空軍パイロットとして従軍した後、民間航空会社に入社した。サン=テグジュペリは、1926年にその会社に入り、パイロットとして働き、後にアルゼンチン法人の社長としてブエノスアイレスに赴任する。妻コンスエロと出会ったのも、ブエノスアイレス時代である。同社は、その後、汚職事件などをめぐって倒産し、サン=テグジュペリもパイロットの職を失う。

ゲランの有名な香水「夜間飛行」は、サン・テグジュペリの友人でもあったジャック・ゲランが調香し、この小説にちなんで名付けられたものだ。

似た雰囲気の映画が

「夜間飛行」を読んで、南米を舞台に輸送機で危険な飛行をする映画を見た記憶がよみがえってきた。「夜間飛行」も映画化されているが、それを見たのかなと調べてみると、そうではなかった。

記憶にあった映画は、邦題「コンドル」。たまたまテレビで見たのだが、印象に残っている。そういうパターンが多いのは、先入観なく見るせいだろうか。

コンドル 原題 Only Angels Have Wings 1939年 アメリカ

監督 ハワード・ホークス 出演 ゲーリー・クーパー、ジーン・アーサー

あらすじ。アメリカ人のショーガール、ボニーが南米での巡業を終えて帰国する途中に立ち寄った町で、郵便物などを運ぶ航空会社のパイロットたちと知り合い、心を惹かれる。ボニーが帰国を延ばして滞在している間に、様々な人間模様や業務の危険さを知る。支配人のジェフを愛するようになったボニーは、ジェフが悪天候をおしての危険な飛行をするのを止めようとして怪我をさせてしまう。別のパイロットを乗せて飛び立った飛行機は事故に遭い、着陸はできたものの機体は大破し、乗員の一人は息を引き取る。航空会社はその後も、限られた人員や機体で業務を続けていく。

名画特集などで選ばれるような映画ではないかもしれないが、なかなかよかった。

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