2018年ももうすぐ大晦日。小学生くらいのころ、大晦日だけは除夜の鐘がなる頃まで起きていてよかったのだが、眠いのを我慢しながら、特別な日だという楽しい気分を味わっていたのを思い出す。
先月、11月5日のガイフォークスデイにちなんで、「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」を再読したのだが、この本には、大晦日の物語もある。7話目の「末ながく幸福に」だ。
メアリー・ポピンズは、P.L.トラヴァースの書いた一連の児童文学に登場するナニーの名前である。ナニーは、20世紀初頭頃までイギリスの中上流家庭で子供の養育やしつけなどを担当していた家事使用人で、現代では、執事と同様、富裕層を対象としたサービスをする専門職となっているようだ。
メアリー・ポピンズのシリーズには、「風にのってきたメアリー・ポピンズ」、「帰ってきたメアリー・ポピンズ」、「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」、「公園のメアリー・ポピンズ」の4冊の本がある。これらは、メアリー・ポピンズの独特の性格や言動や、思いもよらない展開が気に入って、子供の頃の愛読書だった。
とびらをあけるメアリー・ポピンズ P.L.トラヴァース 作 林容吉 訳 岩波書店 1964
末ながく幸福に
「フランネルのゾウ」のフランネルというのは厚地の起毛生地。「ハンプティ・ダンプティ」や「パンチとジュディ」はマザーグースの童謡に登場する。クランペットは、イギリスのパンケーキの一種。
ロンドンのビッグベンが毎日夜中も鐘をならすのかどうかは知らないが、鐘が12回鳴っている間という不思議な時空感覚や、近くの公園での非日常の雰囲気が好きな物語だった。
メアリー・ポピンズの物語では、大冒険というほどのことは起きない。しかし、何もかも作りこんだ架空の世界というのではなく、日常と非日常の行き来がさりげないところが好みである。
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とびらをあけるメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)