加古里子(かこさとし)さん 追悼

アルテミス
アルテミス

絵本作家の加古里子さんが、2018年5月2日に亡くなったことを、ゴールデンウィーク明けのニュースで知った。

失礼ながら最初の反応は「まだご存命だったのか」という驚きであったが、同時に、「亡くなられたのか」と寂しく感じた。

幼少の頃、加古里子さんの「はははのはなし」や「だるまちゃんとかみなりちゃん」など、何度も読んだ。息子が生まれてからは、自分が特に好きだった「とこちゃんはどこ」、「だるまちゃんとてんぐちゃん」を買ってきた。

とこちゃんはどこ

「とこちゃんはどこ」は、作者は松岡享子さん、絵が加古里子さん。

とこちゃんを探すのが楽しく、何度も読んだ。息子も同じで、文字が読めない頃から、飽きずにとこちゃんを探していた。子供は、「楽しい!」と思うと、同じことを何度も何度も繰り返し、同じ本を何度も何度も読む(見る)。この本も、一時は、もうかんべんしてくれといいたいほど、「読んで!」と言われ、何度も何度も読み聞かせたものだ。加古さんの絵はやさしくて味わいがあって、人の顔などおおざっぱなタッチなのに表情があって、飽きないのだろう。

だるまちゃんとてんぐちゃん

「だるまちゃんとてんぐちゃん」は、お父さんのだるまどんが怖そうな顔なのにだるまちゃんのおねだりに頭をしぼる様子や、てんぐちゃんのものと似たものが見つかって、だるまちゃんとてんぐちゃんがお揃いになるのが楽しかった。てんぐちゃんは髪が白くておひげがあるのに、「子供」なのも何だかかわいかった。

息子と公園で遊んでいたときにヤツデの木があったので「だるまちゃんが持ってたうちわの葉だよ。」とヤツデの葉を見せると、「欲しい!」と言い出した。公園では勝手に採るわけにもいかず、困ってしまったものだ。

私は地方の出身だが、子供の頃はどこの庭にもヤツデの木があった。自分の家や祖父母の家のヤツデの葉をとって遊んだものだ。庭木の葉や野の草は、特にダメと言われていない限りは、摘んで遊んでもうるさく言われず、草相撲をしたり、おままごとに使ったりして楽しかったのを思い出す。

日本伝承のあそび読本

草や葉で遊ぶといえば、加古里子さんの「日本伝承のあそび読本」も愛読書だった。

笹の葉でささぶねを作ったり、タンポポの茎で風車を作ったり、クローバーで花飾りを作ったり。もちろん親はこの本で紹介されているような遊びは概ね知っていたが、普段遊び相手になって教えてくれるわけではなかったので、このような指南書があるのは重宝だった。私がこの本で知った遊びをして見せると、親も懐かしがって一緒にやってくれることもあった。

この本は大事にしてきたが傷んできたので、2014年に復刻版が出たときに買っておいた。草や葉を使った遊びは都会では難しいかもしれないが、様々な工作やハンカチを使った遊びも載っている。

おはじきや紙飛行機や手遊びなど、頭や体を使うシンプルな遊びに息子が夢中になるのを見ていると、既製品に頼らず工夫して遊ぶ感覚は大事にしたいと思う。

カラスのパン屋さん

「からすのパン屋さん」は私自身は子供の頃に読んでいない。息子の誕生日プレゼントに親族からもらったのだが、気に入ったようで何度も何度も「読んで」とリクエストされた。

たくさんのパンが描かれた見開きのページは好きな子も多いようだが、息子はそのページだけが特に好きという様子ではなく、からすのお父さんやお母さんの表情に見入ったり、からすの子供たちの名前の響きに笑い声をあげたりと、そのときどきで好きな箇所があるようだった。どのページにも作者の温かい心がこもっているのが伝わってくるのだろうか。

絵や文に時代を感じる部分もあるかもしれないが、加古里子さんの本は今後も読み継がれていくと思う。

心からご冥福をお祈りする。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする