鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」をラクに生きる処方箋 感想

タンポポ
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月刊誌と AERA dot. に掲載されている「鴻上尚史のほがらか人生相談」の質問と回答が本にまとめられ、昨年秋に出版されたことを知り、読んでみた。

鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」をラクに生きる処方箋 鴻上尚史 2019年9月 朝日新聞出版

「鴻上尚史のほがらか人生相談」は、以前、大学生の息子が就職せず俳優になりたいと言い始めたことに悩む父親の相談と回答を読んで印象に残っており、それを機に鴻上尚史さんの著書を何冊か読んでみたりもした。

「高橋一生が『長年の下積み』の末にブレイク」に鴻上尚史が怒り 俳優志望の息子に悩む父親に送った言葉とは」 (鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋)AERA dot.

鴻上尚史 著 「コミュニケイションのレッスン」の感想はこちら

感想

月刊誌「一冊の本」とインターネットサイト(AERA dot.)に連載されていた2018年8月から2019年4月までの相談と鴻上尚史さんの回答をまとめた本である。私はこの期間の相談・回答の記事は AERA dot.で読んでいたので、既読部分が多かった。

それでも出版されたものを読んでみようと思ったのは、いくつか未掲載の新規原稿(相談と回答)が加えられているということだったからである。

AERA dot.の記事の掲載期間は一部を除き半年間で、今は掲載されていない記事も多いので、ずっと連載を読んでいたという人でなければ、未読の記事が多いだろう。また、自分の悩みに近い相談内容がある場合は、本を手元に置いて何度も読み返すのもよいだろう。

劇団でいろいろな相談にのってきたというだけあって、鴻上尚史さんは、相手の悩みを、相談者が自分でも気づいていないかもしれないような部分までよく考えて、できるだけ具体的に答えようとしている。劇団の運営者、公演の主宰者として、役者やスタッフを切り捨てることも自分が逃げることもできない中で、とにかく不満や対立を解消し、分裂するのを防ぎ、公演を成功させなければならないという立場で活動してきた人ならではだと思う。

また、鴻上尚史さんが、大学に入って合コンをしたときに「結局男は容姿なんだ」と衝撃を受けたという体験や、ロンドンの演劇学校に留学したときに「見下されている相手からでも、話しかけられると嬉しい」と感じた体験など、自分自身の体験もまじえての回答には、高みからのお説教や能書きや単なる正論などではない親身さを感じる。

中には誰も回答を示せないような相談もあるが、そういう相談にも、真摯に答える姿勢からは、「この問題には簡単な回答はないのだ」ということが感じられる。「回答がない」というところから始まる思考や模索もあると思うので、そういった相談・回答も決して無駄なやりとりではないと感じた。

第2弾も

最近、第2弾も出たと知った。

鴻上尚史のもっとほがらか人生相談 息苦しい「世間」をラクに生きる処方箋 鴻上尚史 2020年5月 朝日新聞出版

こちらは未読だが、一冊目の収録分の後の連載から25本、書き下ろし原稿2本が収録されているということである。書き下ろし原稿部分が気になる。



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