焼き物の旅 益子焼のぐい呑み

益子で買ったぐい呑み 内側もきれい

もう10数年前のことになるが、飯碗や湯飲み茶碗などの普段使いの食器を、ありあわせではなく気に入った物に変えたくなり、探していたことがあった。1年くらいの間に、東京のデパートなどは一通り見て歩き、栃木県の益子焼、茨城県の笠間焼のほか、長野県の松代焼、愛知県の瀬戸焼、岐阜県の美濃焼も見に行った。たくさんの器を見て、発見もあった。

益子焼

初めに見に行ったのは、益子焼である。

益子焼は栃木県芳賀郡益子町周辺で作られている陶器である。日用雑器の美を見出そうという民芸運動で知られる濱田庄司が作陶していたこともあり、有名になった焼き物である。

春と秋に陶器市が開催されているが、陶器市は非常に混むらしいのであえて外した時期に行った。城内坂~道祖土(さやど)地区周辺に窯、販売店、ギャラリーが集中しているので、1日でたくさんの器を見ることができる。益子焼きは、陶土が荒いという特徴があるが、素朴なもの、モダンなもの、かわいらしいものなど、窯や作家によって作風は多様である。陶芸家を目指している若い人の展示スペースもあった。思い思いに作ろうという雰囲気とともに、切磋琢磨の中で、一歩抜きん出たいとか、割り切って売れる物を作ろうというエネルギーも感じた。おそらく、そういった雰囲気は今もあるのではなかろうか。

最初は、たくさんの器に圧倒されてしまうが、大量に見て回っているうちに、何となく目ができてくるというか、自分の好みも分かってくるような気がした。しかし、1度目には選びきれずに、安価なぐい呑みなどしか買わなかった。

このぐい呑みは500円程度だったが、大きさも色もほどよく、今も気に入って使っている。

益子で買ったぐい呑み

笠間焼 松代焼 瀬戸焼 美濃焼

益子焼のほかに、東京から行きやすいところでは笠間焼がある。

笠間焼は茨城県笠間市周辺で作られている陶器である。見に行ったときの印象では、白っぽい色合いの焼き物が多かった。何も買わなかったので、ちょっと記憶が薄いのだが。

松代焼、瀬戸焼、美濃焼は、数日間かけて旅行がてら見てきた。松代焼は、長野県長野市松代地区で作られている陶器で、青~緑色の釉薬が特徴的である。松代は、松代城や真田邸を見たのが楽しかった。

瀬戸焼は、愛知県瀬戸市周辺で作られる陶磁器の総称である。窯元が多い地区を散策したのだが、そこは大量生産品が多く、物足りなかった記憶がある。

美濃焼は、岐阜県の土岐市、多治見市、瑞浪市、可児市周辺で作られる陶磁器の総称である。志野焼や織部焼を大量に見たと思う。ちょっと気に入った皿もあったのだが、もう少し見ようと思って歩いているうちに、買いそびれてしまった。

それでも、せっかく来たのだから何か買おうと、瀬戸だったか美濃だったかで、安いぐい呑みを買ったのだが、厚地で素朴な雰囲気なのに高台の白い、陶器風に作った磁器で、後になると何となくイヤになってきてしまった。安くても、ナントカ風は買うべきでないという教訓となった買い物であった。

この数日間で、高価な物から安価な物まで大量に見た。短期間に大量に見たおかげか、この後、器の選択眼と値段感覚が少しできた気がする。言い換えると、手作りと大量生産品が多少見分けられるようになり、この質感だとこれくらいの価格帯というのが何となく感じ取れるようになった気がする。

器の好みと選択基準

あちこちでたくさん見たけど、益子焼は結構好みに合う物があったねということに気づき、再び益子町へ。

壺とぐい呑みを買ってきた。

ぐい呑みは、河原健雄さんの作。

壺とぐい呑み 箱はぐい呑みのもの

暗色と銀色の釉薬が格好いい。

益子焼のぐい呑み

壺は西村俊さんの作。購入したときについていた紹介書には「西村俊」となっているが、今インターネットで検索してみると「西村俊彦」とある。

壺が欲しいとは特に思っていなかったのだが、線の模様と形の格好よさが気に入り購入。これだけでも様になる。和風だけど、洋風のインテリアの中でもおさまると思う。

益子焼の壺

真剣にたくさん見ること

益子に始まり益子で一段落した焼き物の旅でたくさん器を見たせいか、少し選択眼が育ったように思う。自分の好みの傾向も自覚でき、「あれだけ見た後でこの器が気に入って、値段がこれくらいなら買おうか。」と決断できるようになった。また、器に限らず「せっかく来たのだからと無理に買うことはしない。」、「ナントカ風の物は買わない。」という基準が明確になった。

また、久しぶりに益子に行ってみようかな。

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