飯碗。普段は御飯茶碗といっているが、普段の出番の多い食器である。ちょっとしたことだけれども、よく使う器は気に入ったものを選ぶと、何となく気分がよいものだ。
瀬戸 赤津焼の飯碗
10年ほど前に、気に入って買った飯碗。
呉須十草。薄手で軽いがしっかりと固く、使いやすい。色合いも落ち着いている。
縦縞の模様、十草(とくさ)は好きな柄。飯碗では、つい十草に目がいく。
内側の線も美しい。白い御飯を盛ると、おいしそうに見える。
織部の吊し柿。ひなびた感じがなかなかよい。
買ったときはどこのどういった焼き物か気にしていなかったが、最近になってこれらの飯碗の底をよく見てみると、「利山」と銘が入っていた。
調べてみると、小林利山という瀬戸赤津焼伝統工芸士の作のようだ。赤津焼は、瀬戸焼のうち赤津地区で焼かれるもので、歴史は古く、灰釉、鉄釉、古瀬戸、黄瀬戸、志野、織部、御深井(おふけ)の7つの釉薬を伝統としているという。
下の2つも同じときに買った飯碗。上の3つより少し厚みがあり、形も丸みがある。
やや小ぶりのシンプルな織部。
この2つも底を見ると、やはり銘が入っており「霞仙」に見えるが、ちょっとはっきりしない。霞仙だとすると、これも瀬戸赤津焼の喜多窯 霞仙 という窯元がある。
買った経緯など
用事で新宿に行ったついでに、京王デパート(だったと思う)の食器売り場に何となく寄ったら、瀬戸の業者が販売会をしていた。飯碗がいろいろあり、ちょうど買おうかと思っていたところだったので、見てみると、割と好みのものがあったのでいくつか選んで買ったのが上の飯碗である。どれも1800円くらいだったと思う。
当時はまだあり合わせの器ばかりを使っており、買う場合もなるべく安くと1つ千円もかけていなかったときで、ちょっと頑張って買ったという覚えがある。
ちょっと高く感じて見送ってしまいそうなところだったが、思い切って買うことにしたのは、そのしばらく前に焼き物の旅をしていたからだろう。
焼き物の旅といっても、たいしたことをしたわけではなく、益子に何度か行ったり、瀬戸地方などを何カ所か回って見て歩いたという程度だが、それでも一度にたくさんの焼き物を見るという経験をした。販売所では量産の安い物から一品物の高い物まで、作品として展示されているような物は評価の高い伝統的な物から新作までいろいろあった。
たくさん見ているうちに、最初はよいと思っても後で何となく嫌になってくるものや、最初はそれほどとも思わなかったが印象に残っているものなど、自分の好みの傾向が少しずつはっきりしてくるのが面白い。
また、買わずに見送ったものが、後でやっぱり買っておけばよかったかなということもあった。慌てて飛びつくのもよくないが、機会を逃さない方がよいこともあるということ、値段がいくらくらいまでで、使う頻度がどれくらいで、どの程度気に入ったら買ってもよいかという自分なりの感覚も少し分かってきたように思う。
そういうささやかな経験があったので、これらの飯碗を見たときに、買うことにしたのだが、今見ても買ってよかったと思っている。