手描き鯉のぼり 橋本弥喜智商店の2016年閉店を惜しむ

鯉のぼり
鯉のぼり 橋本弥喜智商店

息子の鯉のぼりは、埼玉県加須市の橋本弥喜智商店で購入したものだ。

加須市は全国有数の鯉のぼりの産地といわれ、中でも橋本弥喜智商店は手描き鯉のぼりの製造元として知られていた。加須市の鯉のぼり生産は、明治初期に提灯や傘の職人が副業として鯉のぼりを作っていたのが始まりで、関東大震災の後、東京近郊での製造元が減り、浅草の問屋が加須まで仕入れに行ったところ、その品質のよさが評判になり、産業として栄えるようになったという。毎年5月に行われる加須市民平和祭では、ジャンボこいのぼりの遊泳が見られる(2020年は中止)。

加須市の公式サイト内のこいのぼり紹介ページ 「こいのぼりのまち/加須」はこちら

橋本弥喜智商店は、明治41年(1908年)創業。昭和40年頃から、ナイロンなどの化学繊維の生地にプリントした柄の鯉のぼりが、新素材の目新しさや低価格化などから普及し一般的になると、橋本弥喜智商店もプリント化を検討するなどしていたものの、手描きの鯉のぼりを求める声も根強く、手描きの鯉のぼりの製造を続けることになったという。

その橋本弥喜智商店が2016年9月末に閉店したと、最近になって知り、残念に思った。

また、加須市のホームページによれば、2017年には、橋本弥喜智商店の三代目弥喜智こと橋本隆氏の手描きのこいのぼりをもとにした図柄の手ぬぐいが販売されていたようだ。手ぬぐいの柄はプリントとはいえ、400円と手頃な価格で橋本弥喜智商店の鯉のぼりの雰囲気が味わえそうだが、手ぬぐいの発売から数年経った今では、既に販売は終了したかもしれない。

加須市の公式サイト 「こいのぼり手ぬぐい」はいかが? はこちら

手描きの鯉のぼりのよさ

橋本弥喜智商店のことを知ったのは、テレビの地方ニュースで紹介されているのを見たのがきっかけである。

自分が子供の頃、桃の節句の雛飾りや端午の節句の鯉のぼりが楽しみだったが、成長するにつれ雛飾りも鯉のぼりも仕舞ったままになり、年中行事とも縁遠い生活となっていた。橋本弥喜智商店の紹介も、子供がいなければ目にとまらなかったかもしれない。

ちょうど子供が初節句を迎える頃だったので、行ってみようということになり、店を訪れてみた。繁忙期のようで、店の二階には鯉のぼりが所狭しと飾ってあった。

実物を見てみると、木綿地に手描きの鯉のぼりは一点一点に表情があり、質感や絵柄に迫力があった。子供の頃にあったナイロン地にプリントの鯉のぼりにも全く不満はなかったものの、手描きの鯉のぼりには、大量生産品にはない味わいを感じた。

あまり大きいものは飾れないので、小さめのサイズで、気に入った絵柄のものを選んだのが、画像のもの。真鯉(黒)が1.5m、緋鯉(赤)が1.2m、子鯉(青)が1mのサイズで、鱗の柄はあっさり目である。吹き流しと、矢車やポールがついたセットを購入。

価格は、明細がどこかにあると思うが見当たらないので記憶が頼りだが、たしか6~7万円だったと思う。ナイロン製のプリントのものよりは高いが、手描きの手間を考えると抑えた価格だと思った。

購入後は、毎年飾っている。実際に飾ってみると、生地自体に重みと張りがあるので、あまり風が弱いとなびかなかったり、雨に濡れるとシミやカビの原因になるので、雨になりそうだと早めに家に入れるようにしたりと、気になる点や手間がかかる面もある。

ナイロン製の方が少しの風でもよくなびき、少しの雨なら濡れてもすぐ乾いて始末がよい、という点では、安価で手のかからないナイロン製が普及していったのも、分からなくもない。

それでも、木綿地に手描きの鯉のぼりは、ただ眺めるだけでも何となく作品としてのよさを感じるので、気に入ったものを買ってよかったと思っている。

手描きの鯉のぼりは他にも

橋本弥喜智商店が閉店したのは残念である。繁盛しているように見えたが、店主としては、自分の代で終えるという気持ちは以前からあったのかもしれない。

手描きの鯉のぼりの店は、全国的にはまだあるようだ。価格は、小さいサイズのセットでも20万円くらいする場合が多いので、少し思い切った買い物にはなりそうだ。

大きさ、色合い、質感など、インターネットショップの画像ではわかりづらいこともあるので、できれば、実物を見てから買うとよいと思う。

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